YouTuberの事件や炎上は、なぜ妙に大事になるのか。
もちろんYouTuberだけが問題を起こすわけではない。
「それ投稿するな」とスマホを取り上げる大人が、ちゃんと横にいることなのだ。
違うのは、世に出るまでの「止める工程」の数だ。
テレビならタレントの上にマネージャーがいる。企画にはプロデューサー、制作会社、放送局。さらに法務、コンプライアンス、スポンサーの目まで入る。
「それ、やめた方がいいですよ」
この一言を言う大人が何重にもいる。
一方、YouTubeは真逆から始まった。
企画する。撮る。編集する。公開する。全部自分。
しかもSNSは、昔なら有名になるはずのなかった人間にも、平等に拡声器を渡した。
「誰でも有名になれる」は、「有名になる準備ができていない人まで有名になれる」という意味でもあった。
BreakingDownで知られたこめおの「割烹こめを」は、麻布十番納涼まつりで提供した冷やし蟹ラーメンによる食中毒で7日間の営業停止処分。公表時の患者は78人だった。
wakatte.TVは福島大学での発言が炎上し、高田ふーみんが謝罪して動画を削除。プロデューサーの音畑柊は、過去の炎上企画について「わざと火をつけに行って」と語っている。
BreakingDown COOの溝口勇児も2026年、自身を振り返り「だいぶ傲慢だった」と語った。
有名になる速度に、人間の成熟が追いつかない。
芸能界だって昔から事故ってきた。だから何十年もかけ、放送基準、マネジメント、研修、法務、スポンサー確認という「有名人を野放しにしない仕組み」を積み上げた。
芸能事務所の仕事は、売り込むことだけではない。遅刻を叱る。危ない交友関係を注意する。余計な発言を止める。売れた人間を社会から浮かせないための、地味な教育機関でもあった。
対してUUUMの設立は2013年。公式にはHIKAKINら当時のYouTuberの「困ったこと」を解決するところから始まったという。ネット側に「止める大人」が整備され始めて、まだ十数年だ。
2025年にはチョコレートプラネット・松尾駿の「素人はSNSをやるな」発言が炎上した。
確かに傲慢に聞こえる。
でも、逆なのかもしれない。
一般人が変な投稿をしても、届くのは数十人かもしれない。著名人なら一言で数十万人に届き、ニュースになり、会社や共演者まで巻き込む。
SNSは全員に同じ投稿ボタンを与えた。しかし押した後の破壊力は平等ではない。
自由に発信できることと、自由に発信していいことは違う。
本当にSNSをやめた方がいいのは「素人」ではなく、有名になった後も自分を止める人間がいない著名人なのかもしれない。
YouTubeが成熟するとは、自由を失うことではない。
「それ投稿するな」とスマホを取り上げる大人が、ちゃんと横にいることなのだ。
出典・編集注記
『割烹 こめを』への処分は、港区が2026年9月3日に公表した行政資料を参照しました。原因食品は麻布十番納涼まつりで販売された冷やし蟹ラーメン、原因物質はサルモネラ属菌、処分は9月3日から9日までの7日間の営業停止、公表時の患者数は78名です。wakatte.TVの福島大学動画をめぐる謝罪・削除はORICON NEWSを参照しました。音畑柊氏の「わざと火をつけに行って」という発言は、福島大学動画ではなく、過去の法政大学企画を振り返った際のものです。溝口勇児氏の発言は2026年7月5日公開の朝倉未来氏の動画を報じたJ-CASTニュース、UUUMの設立経緯は同社公式FAQ、松尾駿氏の発言は東洋経済オンラインを参照しました。本文は個別事案を材料に、発信者を止める体制の差を論じる編集部の意見です。






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