好きなことを仕事にできたら幸せだ、と言われる。たしかに、頼まれなくても続けてきた時間は強い。知識も技術も、退屈に耐えた回数も、後から始めた人には簡単に追いつけない。

しかし仕事になった瞬間、相手が買うのは好きという気持ちではない。締切までに、求められた形で、一定の品質を出せることだ。昨日は奇跡的に書けた、今日は気分が乗らない。その揺れを引き受けながら、もう一度つくる再現性が必要になる。

好きは始める理由になるが、締切を守る仕組みにはならない。

売らない場所を残す

さらに苦しいのは、好きだった行為が評価と売上に置き換わることだ。数字が落ちれば、自分の好みまで否定された気がする。依頼に応えるほど、最初に何が面白かったのか分からなくなることもある。

だから、すべてを仕事にしない方がいい。誰にも見せない下書き、売れなくても続ける企画、数字を確認しない時間を残す。仕事は表現を遠くへ運ぶが、好きの全部を預ける場所ではない。稼ぐための技術と、まだ値段のついていない衝動を分けて持つことが、長く続けるための現実的な方法だ。

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