昔、アイドルになるには「選ばれる」必要があった。

何千人ものオーディションを勝ち抜き、大手事務所に所属し、テレビに出て、ようやくアイドルと呼ばれる。

だが地下アイドル文化は、その前提を大きく変えた。

「アイドルをやってみる」が可能になった

衣装を着る。

ステージに立つ。

自分の名前が入ったグッズができる。

ファンができ、チェキを撮り、「推し」と呼ばれる。

いまやアイドルという職業は、一部の選ばれた人間だけが到達できるものではなくなった。

極端に言えば、地下アイドルとは女の子たちにとっての「キッザニア」なのではないか。

アイドルという職業を、実際に体験できる場所だ。

夢なのか、職業体験なのか

もちろん、そこで本気で人生を懸けている人もいる。

武道館を目指す者もいれば、メジャーデビューを夢見る者もいる。

一方で、「一度ステージに立ってみたかった」「かわいい衣装を着たかった」という動機から始めても成立する。

この間口の広さこそ、地下アイドル文化の面白さだ。

プロと素人の境界線が消えていく

ただし、キッザニアと決定的に違うことがある。

そこには本物の金が動き、本物の客がいて、本物の評価が返ってくる。

客が来なければライブは埋まらない。

チェキが売れなければ数字として現れる。

「アイドルごっこ」で始めても、ステージに立った瞬間から商売になる。

だから地下アイドルは面白い。

夢と職業体験とビジネスが、同じフロアに存在している。

もしかすると地下アイドルとは、「誰でもアイドルになれる時代」が生んだ、もっとも現代的な職業体験施設なのかもしれない。

SHARE