特撮は、そんなに広く見られているわけではない。
毎週『仮面ライダー』や『スーパー戦隊』を見る大人は限られる。それなのに、そこから佐藤健、菅田将暉、福士蒼汰、竹内涼真、松坂桃李、横浜流星、高橋文哉と、その後のドラマや映画の中心に立つ俳優が何人も出てきた。仮面ライダーは実際、「若手俳優の登竜門」と呼ばれてきた。
なぜだろう。
特撮はヒーロー番組であると同時に、俳優そのものを連載するコンテンツなのかもしれない。
特撮は「売れる前の俳優」を一年かけて見るコンテンツだ。
仮面ライダーは約1年間、ほぼ同じ役を演じ続ける。『仮面ライダージオウ』の奥野壮は「1年間、僕らの成長を見てもらえる」と語り、押田岳は現場を「学校みたい」と表現した。『ゼロワン』の岡田龍太郎も、1年以上同じ役と向き合う中で大きく成長したと振り返っている。
普通の連ドラなら3カ月で終わる。
でも特撮は違う。
最初は芝居が硬い。声も弱い。立ち姿もぎこちない。ところが20話、30話、40話と進むうち、役者本人が役に追いついてくる。
視聴者はキャラクターの成長と、俳優の成長を同時に見ている。
これ、朝ドラと同じ構造じゃないか。
NHKの朝ドラも長期間、同じ人物の人生を追う。新人や若手が半年近く同じ役に向き合い、視聴者も「この子、最初より上手くなったな」と育てるように見る。
さらに言えば、オーディション番組にも近い。
最初は未完成。でも毎週見る。失敗も知る。成長を知る。そして最後には「最初から見ていた」という感情が生まれる。
漫画の週刊連載も同じだ。
第1話で完成している必要はない。キャラクターと作品が連載の中で育ち、読者も一緒に年月を過ごす。
しかも特撮は、俳優の成長が作品側まで変えていく。『リュウソウジャー』のプロデューサーは、俳優の個性によって当初想定していなかったキャラクターのゴールへ着くことがあると語っている。
役を演じるのではなく、役と役者が一緒に育つ。
だから放送初期と最終回では、同じ人物なのに顔つきまで違って見える。
特撮俳優が売れる理由は、「イケメンの登竜門」だからだけではない。
一年間の公開養成所だからだ。
東映の白倉伸一郎も、学園ドラマが減った時期に若手俳優が活躍できる場として特撮へ業界の注目が集まったと語っている。
新人に毎週芝居をさせる。アクションをさせる。泣かせる。叫ばせる。取材もイベントも経験させる。
そして一年後、世間に放り出す。
視聴率だけ見れば国民全員が見ている作品ではない。
でも最初から1000万人に知られる必要はない。
一年間「この人が育つところ」を見た濃いファンを作ればいい。
そこにはオーディション番組の“推して育てた感覚”と、連載漫画の“初期から知っている感覚”が同時に残る。
特撮はヒーロー番組であると同時に、
俳優そのものを連載するコンテンツなのかもしれない。
出典・編集注記
『仮面ライダー』『スーパー戦隊』が若手俳優の登竜門と呼ばれてきたこと、佐藤健、菅田将暉、福士蒼汰、竹内涼真、松坂桃李、横浜流星、高橋文哉らの出演歴は、作品公式情報・出演者インタビュー・番組紹介を照合しました。『仮面ライダージオウ』出演者が撮影現場を『学校みたい』と語り、押田岳が成長を振り返った発言、『仮面ライダーゼロワン』の岡田龍太郎が1年以上同じ役と向き合い成長したという発言を参照しています。『騎士竜戦隊リュウソウジャー』について、俳優の個性によって当初の想定からキャラクターの変化が生まれるという内容も、プロデューサー取材を参照しました。朝ドラ、オーディション番組、週刊連載漫画との構造的な類似、および特撮を『一年間の公開養成所』『俳優そのものを連載するコンテンツ』と見る結論は、編集部の意見です。






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