アイドルは「選ばれた人」であって「選ぶ人」ではない

猪俣周杜の逮捕と契約解除を見て、改めて思う。

timelesz projectでは、菊池風磨、佐藤勝利、松島聡の3人が審査員となり、1万8922人の応募者から新メンバーを選んだ。その結果、猪俣も加入した。

もちろん、猪俣の逮捕を3人の「見る目のなさ」と直結させることはできない。STARTOも、他メンバーが問題行為を事前に把握せず、予見できる兆候も確認されていなかったとしている。

ただ、それでも疑問は残る。

アイドルとして選ばれた人間に、なぜ「次のアイドルを選ぶ能力」まである前提になっていたのか。

ダイヤモンドは美しい。だからといって、そのダイヤ自身が優秀な宝石商とは限らない。

売れた瞬間、全部できる人にされる

菊池風磨も二宮和也も山田涼介も、演者として巨大な結果を出してきた。

しかし、歌う能力、スターとして人を惹きつける能力と、企画を作る能力、他人の才能を見抜く能力、編集する能力は別物だ。

ここを芸能界はよく混同する。

人気者になると、審査員を任され、MCを任され、プロデュースを任され、YouTubeまで始める。

『よにのちゃんねる』も、その象徴に見える。人気は巨大で、ファンには「オフ感」「仲の良さ」が支持されている。一方、筆者には企画そのものが面白いというより、「人気者がそこにいる」こと自体がコンテンツになっているように映る。

スターであることと、面白いものを作れることは同義ではない。

宝石商には宝石商の訓練がある

人を選ぶ側には別の経験が必要だ。

何百人も見て、売れなかった理由も、途中で崩れた理由も、現場で伸びた理由も知る。スカウト、マネージャー、演出家、プロデューサーが培う「見る目」は、本人が売れた経験だけでは代替できない。

自分が選ばれた成功体験は、むしろ判断を狭くすることすらある。「自分に似た人」「自分が好きなタイプ」を才能と錯覚するからだ。

自我を出すほど、肩書きの魔法が解ける

旧来のアイドルは、放送作家、振付師、演出家、マネージャーというプロに囲まれ、「最も魅力的に見える自分」を作ってもらっていた。

SNSとYouTubeは、その裏側を壊した。

本人が企画し、喋り、人を選び、判断まで商品になる。そこで初めて、スター性と判断力は別物だと露出する。

猪俣の事件を「アイドルに自我を出させた結果」と断定するのは違う。行為の責任は本人にある。

ただ、タイプロが象徴したのは、アイドル自身へ「選ぶ側」の権力まで与える時代だ。

アイドルは磨かれたダイヤでいい。

問題は、そのダイヤに「次の原石も君が選んで」と宝石商の仕事までさせ始めたことだ。

芸能界が見直すべきなのは、スターにどこまで判断を委ねるのか、線引きなのかもしれない。

出典・編集注記

事実確認(2026年10月3日):ORICON NEWSの『timelesz project -AUDITION-』特集で、佐藤勝利、菊池風磨、松島聡が審査員を務め、応募総数1万8922件から、猪俣周杜、篠塚大輝、寺西拓人、橋本将生、原嘉孝の5人が新メンバーに選ばれたことを確認しました。STARTO ENTERTAINMENTの契約解除発表では、他のメンバーは問題行為を事前に把握しておらず、具体的に予見できる兆候も確認されていないとしています。猪俣は処分保留で釈放され、捜査継続中で刑事処分は確定していません。ORICON NEWSの「第8回好きなYouTuberランキング」では、『よにのちゃんねる』について、先輩後輩を越えた仲の良さ、ゆったりした雰囲気、オフ感や日常が支持理由として紹介されています。「企画そのものより人気者がいることがコンテンツになっている」「スター性と企画力・選考力は別」という評価は筆者の論評であり、番組制作能力やメンバーの人格について客観的に確定した事実を示すものではありません。画像は本人、実際のオーディション、撮影現場を再現したものではありません。

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