予選にもテーマソングが来た
ABCテレビが10月9日、ORANGE RANGEによる『M-1グランプリ2026』予選テーマソング「レガアイハ」を発表した。同日19時には楽曲を使ったティザー映像をM-1公式YouTubeなどで公開。曲は予選の出囃子にも使われる。決勝のテレビ放送だけでなく、予選を追う人の耳にも同じ音を残す設計だ。
M-1は芸人のネタを競う大会であり、同時に何千組もの挑戦を一本の物語へ束ねる巨大な番組でもある。ORANGE RANGEのような広く知られたバンドを入口にすれば、ふだん予選を見ない人へも届く。その効果は素直に認めたい。ただ、曲名からも敗者の悔しさを想像させる宣伝は、まだ一分も漫才を見ていない客の感情を先に決めてしまう。
出囃子は採点表ではない
出囃子は会場の空気を整える。しかし全組へ同じ物語をかぶせるなら、芸人の異なるテンポや危険な笑いが均される。滑稽な失敗を笑わせたい組にも、人生の逆転を語りたい組にも、同じ『頑張った』の枠を置くべきではない。予選の強みは、テレビ向けの編集がまだ追いつかない雑多さにある。
大会側は、挑戦する人を敬うための曲だと言うだろう。それは正当だ。しかし敬意と感動の誘導は違う。落ちた芸人を『敗者』と呼ぶ視線自体が、次の舞台で使える失敗を一度終わった物語にしてしまう。M-1には敗退後に別の場所で支持を得る組もいる。結果表はその日の審査であり、才能の終身判決ではない。
曲が終わった後に何を残す
予選を会場や配信で見る人は、派手な音楽より小さな間に反応する。ORANGE RANGEの曲が観客を連れて来たなら、その人たちが知らない芸人の名前を覚えて帰れる導線も必要だ。ティザーの再生数を伸ばすだけでは、予選の裾野は広がらない。ネタの公開範囲、日程の見やすさ、各会場へのアクセスといった地味な整備が音楽の勢いを受け止める。
大会の公式映像が予選の顔を作る一方、各地のライブには撮影されない組がいる。特定の挑戦者だけをドラマの主人公へ選ぶと、選外の組は大会に参加していないかのように見える。音楽が同じなら、画面に映る機会もできるだけ偏らせない工夫がほしい。
ORANGE RANGE側にも予選で曲を鳴らす利点がある。決勝当夜の一度きりの放送より、長い大会期間を通じて繰り返し聴かれるからだ。その接点が芸人のネタへ視線を渡すなら、タイアップは両者に開かれる。曲だけが大会を代表するなら順序が逆だ。
M-1は優勝者だけの歴史ではない。審査の先へ進めなかった組を短い感動映像に並べるより、その一組の漫才へたどり着ける記録を残してほしい。オレンジレンジという名前を聴いて予選を開いた人が、次に自分で劇場へ行くならタイアップは成功だ。「レガアイハ」が鳴る前に芸人の運命を説明するな。観客が笑ってから、勝手に続きを探せる大会であれ。
出典・編集注記
出典(2026年10月10日確認):ABCテレビの告知とM-1公式映像。発表日、曲の役割、公開予定を確認。予選結果や楽曲の出来は評価していません。画像は実際の出演者・会場ではありません。






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