「みんなが聴いているからダサい?」と自分で言った

Mrs. GREEN APPLEのニューアルバム『POPS』の広告が話題になっている。

白地に黒文字で「みんなが聴いているから好き?」「みんなが聴いているからダサい?」「暗い曲は流行らない?」「音楽の価値は何で決まる?」。公式も「確かめよう。」という動画で同様の問いを並べた。

正直、少し安心した。

よかった。少なくともミセス自身に、「自分たちはダサいと見られる可能性がある」という認識はまだ残っている。

売れすぎた人間は、自分に向けられる違和感まで「嫉妬」で処理できてしまう。だから自分たちから「ダサい?」を広告に置けるのは、現在地を見ている証拠でもある。

音楽だけでは足りないのか

ただ、同時に別の疑問も湧く。

なぜミセスは、ここまで「音楽以外」に進出するのだろう。

大森元貴は2025年の映画『#真相をお話しします』で菊池風磨とダブル主演。Mrs. GREEN APPLEとしてもTBS『テレビ×ミセス』でMCを務め、2026年にはレギュラー化。コント、ロケ、バラエティ企画までこなす。

音楽ではもう疑いようがないほど成功している。それでも、俳優もできる、MCもできる、笑いも分かる、ファッションも成立する――そんな「全部できる人」であることを証明し続けているようにも見える。

もしかすると怖いのは、「音楽以外の才能はない」と思われることなのではないか。

もちろん本人たちがそう考えていると断定する材料はない。ただ、音楽一本で頂点に立った人ほど、その肩書きだけに閉じ込められることを恐れる瞬間はあるのだろう。

才能は足し算ではない

だが、ここには危うさがある。

圧倒的に曲が書ける人が、圧倒的に面白いとは限らない。歌えるから演技が上手いとも限らない。服を着ればファッションアイコンになるわけでもない。

才能は足し算ではない。

むしろ一つの才能が巨大すぎる人ほど、周囲が別分野まで褒め始める。その瞬間、本人も「自分は何でもできる」と錯覚しやすい。

今回の「ダサい?」というコピーが面白いのは、その万能感に自分たちで針を刺しているように見えるからだ。

大森は『POPS』という題について、「分かってくれる人に届けばいい」と作るのはダサい気がした、多くの人に届ける覚悟を持つべきだという趣旨を語っている。

ならば、本当に必要なのは何でもできることではない。

音楽では圧倒的。でも、他では普通かもしれない。

それを受け入れられる方が、ずっと格好いい。

「みんなが聴いてるからダサい?」と問えるうちは、まだ自分たちを疑えている。

問題は、その問いを広告にできる自意識が、いつ「自分たちは何をやっても成立する」に変わるかだ。

出典・編集注記

事実確認(2026年10月2日):Mrs. GREEN APPLE公式サイトで、6thオリジナルフルアルバム『POPS』収録全16曲の世界を表現する広告を2026年9月29日から東京で展開し、他都市でも順次展開すると発表したことを確認しました。「みんなが聴いているから好き?」「みんなが聴いているからダサい?」などのコピーと、公式SNS動画「確かめよう。」についてはORICON NEWSの報道で確認しました。デイリースポーツの大森元貴インタビューでは、『分かってくれる人に届けばいい』という作り方への違和感と、多くの人へ届ける覚悟を語っています。映画『#真相をお話しします』公式情報で大森元貴と菊池風磨のダブル主演、TBS公式情報でMrs. GREEN APPLEが『テレビ×ミセス』のMCを務め、2026年にレギュラー放送が始まったことを確認しました。大森やメンバーが「音楽しかできないと思われることを恐れている」という趣旨を公言した事実は確認できず、本稿の心理分析は筆者の論評です。画像は本人や実際の広告・番組・撮影現場を再現したものではありません。

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