『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』は最強のバラエティである。
老人に変装した一流アスリート。街中に現れるスター。ふらっとカラオケへ来たにしては、明らかに歌がうますぎる人。そして、絶対バレているだろう、その変装。
でも誰も気づかない。『このおじいちゃん、すごくない?』『なんでこんなに歌がうまいの?』。正体が明かされれば『えええええ!』。令和8年である。まだこれをやっている。
制作陣が気づいていないことに、視聴者が気づいていないフリをしてあげる。
たぶん、本当にバレていないと思っている
普通なら制作側も途中で不安になる。『これ、視聴者にバレてない?』。だが『モニタリング』は一切迷わない。たぶん本当にバレていないと思っている。ここが強い。
山崎育三郎が高校へサプライズ訪問すれば、女子高生が『キャー!』。いや、そんなわけあるか。山崎育三郎は素晴らしい俳優で、ミュージカルスターだ。でも体育館に現れた瞬間、全員がアイドルライブ級の熱量になる。その世界観を番組は一切疑わない。視聴者の方が『まあ、テレビだからね』と大人になる。
実はモニタリングされているのは視聴者
制作陣は『今回も騙せた』と思う。視聴者は『今回も騙されたことにしておくか』と思う。老人の正体も、歌うま一般人の正体も、出来すぎたサプライズも分かっている。でも黙る。
子供がマジックを披露したとき、大人は仕掛けが見えても『えー! なんで!?』と言ってあげる。日本人は毎週、TBSにそれをやっている。視聴者のテレビリテラシーが高すぎる。
双方が違うゲームをしているのに、なぜか視聴率という一点で合流する。奇跡である。
視聴者が介護する、平和な茶番
『水曜日のダウンタウン』なら、仕掛けが見えた瞬間に企画が死ぬ。だが『モニタリング』は死なない。視聴者が介護してくれるからだ。
バレバレの変装。歌がうますぎる一般人。出来すぎた偶然。黄色すぎる歓声。全部分かった上で『すごーい!』と言ってあげる。
長寿の秘密は企画力でもキャスティングでもない。制作陣が気づいていないことに、視聴者が気づいていないフリをしてあげる。この優しすぎる共犯関係こそ、日本のテレビ史上もっとも平和な茶番なのかもしれない。
出典・編集注記
本稿は番組演出と視聴体験についての批評です。出演者や一般参加者の反応を事実認定するものではありません。番組情報はTBS公式サイトおよび放送アーカイブを参照しました。






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