M!LK「好きすぎて滅!」を聴いていると、どうしてもゴールデンボンバー「女々しくて」が頭をよぎる。
理由は“男が恋に取り乱している”からだけではない。音楽の作り方そのものが近い。
宴会ソングという古い日本文化を、TikTok時代へ再実装した。
BPMとタイトル連呼
「好きすぎて滅!」はBPM149の4/4拍子。「女々しくて」もBPM143。どちらも高速で走りながら、タイトルとなる強烈な言葉を何度も反復する。
「女々しくて」は冒頭からタイトルを連呼し、Aメロ、Bメロを経て再びそこへ帰る。「好きすぎて滅!」も「ぎゅんぎゅんぎゅん」「滅!」という短いフックを先に耳へ刻み込む。
ただし令和版はさらに忙しい。公開コード譜ではD♯mから始まり、調性を次々と変え、EDM的なパート、セリフ、ブレイクまで投入。3分台の中で刺激が更新され続ける。
最初から「みんなで歌える曲」を作る
この過剰さは偶然ではない。M!LKは「イイじゃん」がTikTokで広がった次に、短い音源だけでなく1曲まるごと楽しんでもらい、カラオケで歌われる曲を目指したと明かしている。「ちょっと昔っぽい曲調に、今風の歌詞」という案も出ていた。
吉田仁人も、スタンドマイクの前に男たちが横並びで熱く歌う姿を「ちょっと懐かしい歌謡」と表現した。振付は「かわいいだけじゃだめですか?」なども手がける槙田紗子。M!LK自身がコール講座まで公開している。
結果、「好きすぎて滅!」はBillboard JAPANでストリーミング累計1億回を突破。設計はちゃんと届いた。
偶然の怪物と、設計された怪物
ここで「女々しくて」と決定的な違いが出る。鬼龍院翔は後年、カラオケを意識していたなら、あんなに息継ぎのできない曲は作っていないという趣旨を語っている。それでも「女々しくて」は、オリコン週間カラオケランキング51週連続1位の怪物になった。
つまり「女々しくて」は、感性で作った曲が結果として国民的宴会ソングになった。対して「好きすぎて滅!」は、高速テンポ、反復できる言葉、懐かしい歌謡感、全員で真似できるポーズ、コール、途中で離脱させない刺激を最初からかなり意識している。
宴会ソングをTikTokへ再実装する
もちろん「似ているからパクリだ」という話ではない。十数年前に偶然完成した“みんなで参加できる曲”の条件を、M!LKは現代のSNSとライブ文化に合わせて更新している。
みんなが知っている。みんなで叫べる。なんとなく踊れる。
「好きすぎて滅!」は、宴会ソングという古い日本文化をTikTok時代へ再実装した、令和版「女々しくて」なのかもしれない。
出典・編集注記
M!LK公式MV、音楽ナタリーとBillboard JAPANのメンバー取材、槙田紗子の振付取材、Billboard JAPANのストリーミング集計、ゴールデンボンバー公式映像ページを参照しました。「好きすぎて滅!」は2026年2月にBillboard JAPANで累計1億回、同年6月に2億回を突破し、9月にはオリコン集計で3億回を超えています。BPM149/143、D♯mから始まるという記述は公式公表値ではなく、公開されているテンポ・コード解析上の目安です。両曲を令和版/平成版として結ぶ結論は編集部の比較・考察であり、制作上の影響関係や模倣を断定するものではありません。






レスポンスを読み込んでいます…