現地時間9月7日、是枝裕和監督の実写映画『ルックバック』が第83回ベネチア国際映画祭で公式上映された。出口夏希、蒔田彩珠らが参加し、約1000人の観客から12分を超えるスタンディングオベーションが送られたという。
めでたい。歓迎されたのは間違いない。
ただ、日本の記事を読むと、藤本タツキでも是枝裕和でもなく、まず“12分”が歩いてくる。
いつから拍手は、公開前の興行成績になった?
『ルックバック』は100分の映画である。漫画を描く手、鉛筆の音、藤野と京本の時間。その100分を説明するより、12分と書く方が早い。数字だから比較できる。SNSの見出しにもなる。
そして日本公開前の観客は、「そんなに拍手されたなら傑作だろう」と安心できる。映画を観る前に、海外の会場から星の数だけ輸入しているようなものだ。
スタンディングオベーションに、統一ルールはない。
いつから計り、どこで終えるかは媒体によって違う。監督や俳優が客席へ応えれば伸びるし、会場の慣習やスターへの敬意も混ざる。映画祭の拍手は祝祭であって、共通問題の試験ではない。
12分に価値がないのではない。その場で愛された証拠ではある。ただし、脚本、演技、撮影、原作との距離を何ひとつ説明してくれない。
100分の映画を、12分の拍手で分かった気になる。映画祭報道が測っているのは作品の深さではなく、見出しの作りやすさなのかもしれない。
出典・編集注記
2026年9月7日に第83回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で行われた『ルックバック』公式上映と、その後の報道を対象にしたメディア批評です。約1000人から12分超の拍手が送られたとの時間は配給側発表を伝えた国内報道に基づきます。拍手時間には普遍的な計測基準がなく、作品評価と同一ではないという過去の業界解説も参照しました。映画本編の鑑賞レビューではありません。






レスポンスを読み込んでいます…