日本人は昔から、言葉を削ってきた。短歌は五・七・五・七・七の31音。俳句は、さらに短い五・七・五の17音。たったそれだけで、季節も景色も恋も寂しさも表現してきた。ところが2026年。現代の成功者が気持ちを伝えようとすると、Xで2000文字になる。なぜ退化した。
BreakingDown COOの溝口勇児は2025年12月、BreakingDown18の前日公開計量をめぐる問題について、Xに1820文字の投稿をした。重大な問題なら説明責任はある。しかし最近のYouTuber社長は、会社としての説明と『俺の気持ち』が混ざる。背景、経緯、誤解、反論、反省、決意。全部書く。
Hinaこと梶崎妃那のLinkUp代表退任をめぐっても、本人がXとYouTubeで経緯を説明し、BUDDICAの中野優作も自身の見解を発信した。長文VS長文。インターネット大お気持ち選手権である。
情報が溢れる時代に必要なのは、言葉を増やす能力ではない。言葉を捨てる能力だ。
長文なんてアホでも書ける
文章は、長くするほうが簡単だ。『あれも伝えたい』『ここも誤解されたくない』と思ったことを全部足せば、3000文字なんてすぐ完成する。難しいのは逆だ。3000文字の感情を、30文字まで削ること。何が重要で、何を捨て、相手に何を覚えてほしいのか。それを決めなければ短くできない。
名コピーも名言も、長々と事情を説明しない。一行で刺す。優秀な人間ほど短い言葉で人を動かしてきた。
『全部説明すれば分かってもらえる』という甘え
社長YouTuberは、社長、広報、出演者、インフルエンサー、そして物語の主人公を兼ねる。会社で問題が起きても、『会社として何を発表するか』より『俺はどう思っているか』がコンテンツになる。だから長くなる。
だがXを見ている人間にとって、あなたの人生はそこまで重要ではない。長く書くほど余計な一文が生まれ、そこだけスクショされ、また炎上し、また反論を書く。お気持ち永久機関の完成である。
会社の正式な説明なら長くていい。契約や事故なら詳細を書くべきだ。だが気持ちまで全部説明する必要はない。松尾芭蕉は17音だった。現代のYouTuber社長は2000文字。その2000文字を一行にして、知らない人間まで動かしてみろ。それができて初めて、言葉が上手いのである。
出典・編集注記
溝口勇児氏の投稿については日刊スポーツ(2025年12月17日)、梶崎妃那氏の退任発信と中野優作氏の見解については本人のX・YouTube発信およびユーチュラ(2026年7月18日)を参照しました。本稿の『アホ』は個人の能力を断定するものではなく、長文の“お気持ち表明”という表現形式への論評です。参考:






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