9月3日、港区は麻布十番の「割烹こめを」に7日間の営業停止を命じた。

原因は、麻布十番納涼まつりで販売した「冷やし蟹ラーメン」。サルモネラ属菌による食中毒で、公表時の患者は78人だった。

店主はBreakingDownで一躍有名になった、こめおだ。

ここで一つ、嫌な疑問が浮かぶ。

なぜ我々は「有名になった人」を、そのまま「信用できる人」に変換してしまうのか。

むしろ問題は、その“物語”が強すぎたことだ。

こめおは刑務所にいた過去を自ら公表し、「闘う料理人」として再起した。

もちろん、更生を否定する話ではない。前科と食品衛生は別問題だ。

BreakingDownで売れる。料理人として再起する。麻布十番に完全予約制の割烹を出す。

「割烹こめを」の通常コースは1万9800円。かつては年50万円の会員制度まで用意されていた。

麻布十番。高級割烹。予約制。有名人。

これだけ揃うと、人は勝手に、「ちゃんとした店なんだろう」と思う。

でも、有名になる能力と、安全に飯を出す能力は別物だ。

しかもこめお本人は2023年、成功を振り返って、自身の影響力を「たまたまついた影響力」と表現していた。

本人が一番分かっていたのかもしれない。

知名度は、料理人としての修業年数でもなければ、衛生管理能力の証明でもない。

それでも世間は、「BreakingDownのこめおが麻布で高級割烹」というストーリーに価値をつけた。

「金を持ったバカが集まっていた」と客を笑うのは簡単だ。

でも、本当に怖いのは我々の側にも、「高い=ちゃんとしている」「有名=プロ」という雑な思考があることだ。

高級店は料理だけではない。「この店なら大丈夫」という信用まで売っている。

今回、その一番根っこにある食品衛生で事故が起きた。

食べログの星より、フォロワー数より、麻布十番という住所より。

飯屋で最後に信用すべきなのは、地味で、映えなくて、誰も動画にしない衛生管理である。

出典・編集注記

2026年9月3日の港区公表をもとにした論評です。港区は、麻布十番納涼まつりで販売された冷やし蟹ラーメンを原因食品、サルモネラ属菌を原因物質とし、『割烹 こめを』へ9月3日から9日まで7日間の営業停止を命令しました。患者数は公表時点の78人です。コース料金・会員制度は店舗公式サイト、本人の『たまたまついた影響力』という表現は2023年の本人投稿を参照。タイトルおよび本文の信用や知名度に関する一般化は編集部の意見です。

SHARE