絶滅しそうな動物は保護される。
そして文化も、放っておけば消えるものは「残さなければならないもの」になる。
もちろん歌舞伎は絶滅危惧種ではない。
だが1965年には国の重要無形文化財に指定され、2008年にはユネスコの無形文化遺産代表一覧にも記載されている。つまり、とっくの昔から「未来へ残すべき文化」として扱われてきた。
でも「保護されている」と「客が来る」は別
文化財に指定されたからといって、若者が突然チケットを買うわけではない。
「伝統があります」
「400年続いています」
そう言われても、興味がなければ行かない。
ところが映画『国宝』は、その壁をあっさり突破した。
本当に客は増えていた
歌舞伎座では『国宝』公開後の2025年7月から12月、新規来場者が約2万5000人に達した。
それ以前は月約2000人だったというから、新規客のペースはほぼ倍になった計算だ。歌舞伎座側も『国宝』の影響を明確に認めている。
歌舞伎俳優の中村隼人も、東京以外の劇場を含め客層の変化を実感していると語っている。
文化を救うのは「教育」よりミーハーなのかもしれない
ここが面白い。
何十年「日本の伝統文化です」と教えるより、吉沢亮や横浜流星が美しい歌舞伎役者を演じた映画一本の方が、人を劇場へ連れてきた。
最初の理由なんてミーハーでいいのだ。
映画が格好よかった。
役者が美しかった。
本物を一度見てみたい。
それで十分だ。
国は文化を「残す」ことができる。
しかし文化を「流行らせる」ことは難しい。
絶滅させないのが文化保護なら、もう一度客を熱狂させるのがエンタメだ。
『国宝』がやったのは、保護されていた歌舞伎を、もう一度「見たいもの」に戻すことだったのかもしれない。






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