売っているのはポップコーンか
TOHOシネマズが「POPなCINEMAS PROJECT」を始め、第一弾にFRUITS ZIPPERを起用した。10月16日からファンライト型のポップコーンボックスを税込3700円、チャームとドリンクスリーブのセットを1500円で数量限定販売する。前者にはポップコーンとアポロ、後者にはドリンクが付く。全国の劇場と通販で扱うが、通販に飲食物は付かない。つまり同じ容器でも、現地の体験と物販では中身が違う。
FRUITS ZIPPERの七人は上映前の幕間CMにも登場し、メンバーの台詞を「ポ」に絞った映像を流す。館内にはフォトスポット、渋谷店にはエレベーターのラッピングまで用意される。映画を観に来た人が売店で偶然見つけるだけでなく、商品を目的に映画館へ足を運ぶ導線である。
映画館の空白時間を誰が使う
予告と本編の間は、観客がまだスクリーンに目を向けている時間だ。そこへアイドルの新しい映像を置くことは、劇場にとって理にかなう。客足が伸び悩む時代に収益源を増やし、ファンには大きな画面で推しを見られる楽しさがある。映画館は昔からパンフレットや限定商品を売ってきた。推し活だけを特別扱いして批判するのも筋が違う。
ただしCMが強くなりすぎれば、上映前の高揚は映画へ向かう準備ではなく別の消費への入口になる。作品と無関係な芸能商品が館内を覆う時、観客は何を観に来たのか。劇場側が答えるべきは「売れるか」だけではない。映画本編へ気持ちを返す設計まで含めて来場体験である。
3700円が示す容器の価値
価格を普通のポップコーンと比べれば高い。しかし客が払うのは菓子の量ではなく、形、限定性、七人の物語だ。値段そのものより気になるのは、数量限定と店舗特典が「今買わないと失う」を何重にも作ること。公式は売り切れ次第終了と告知している。熱心なファンほど購入時間を気にして上映予定を組み直すかもしれない。
商品の発送には飲食物が付かないと明記されている。通販だけで買う人と、上映の前後に売店へ寄る人では同じ金額が指す体験も異なる。現地で食べた記憶を持ち帰る容器なら納得する人もいるだろう。だから価格の議論を「高い」「安い」だけに縮めず、映画を観ない購入者にも何を届けているのか説明が欲しい。
映画館側はこれを来場体験の向上と説明する。その言葉が本当になるには、コラボ目当てで初めて劇場を訪れた人に、上映作品を選ぶ楽しさまで渡す必要がある。
映画館がアイドルと組むなら、商品だけでなく作品との接点も作れるはずだ。メンバーが薦める一本や、映画を語る短い企画があれば、推しの入口から未知の映画へ進める。FRUITS ZIPPERのファンを売店へ集めるだけでは、映画館は大きな物販会場に縮む。3700円を払った人が次に買いたくなるものは、別の容器ではなく映画のチケットであってほしい。
出典・編集注記
出典(2026年10月9日確認):TOHOシネマズの公式リリース。販売開始日、商品内容、税込価格、CMと店舗展開の確認に使用。画像は実商品や出演者の写真ではありません。






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