かわいい。

小さい。

丸い。

『ちいかわ』を表面だけ見れば、これほど安心できそうなキャラクター作品もない。

だが『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』を観ると、改めて思う。

これ、ホラーではないか。

2026年7月24日に公開された本作は、原作でも人気の長編「セイレーン編」を映画化した作品だ。原作・脚本はナガノ。公式サイトでもシリーズ屈指の人気エピソードとして紹介されている。\([『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』公式サイト](https://chiikawa.toho-movie.jp/atm/index.html)\)

始まりから完全に「因習村ホラー」

ちいかわたちのもとへ突然届く「特別な島への招待」。

魅力的な言葉に誘われ島へ向かうと、見知らぬ島民たちから異様なほど歓迎される。

そして聞かされる。

この島では巨大なセイレーンが、島民を次々と連れ去っている――。(『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』公式サイト)

知らない土地。

妙に親切な住民。

外から来た主人公たち。

島に伝わる怪物。

そして、住民たちが隠している「何か」。

もう完全に因習村ホラーの導入である。

かわいいからこそ、狂気が逃げ場を失う

『ちいかわ』の恐ろしさは、怖いものを怖そうに描かないことだ。

世界はパステルカラーで、キャラクターはかわいい。

ご飯を食べ、歌い、喜ぶ。

なのにその世界では、討伐が仕事として存在し、得体の知れない生物が現れ、時には生命そのものが脅かされる。

普通のホラーなら暗い画面と不気味な音楽で「ここは怖い場所ですよ」と教えてくれる。

ちいかわは教えてくれない。

かわいいまま、狂気だけがやってくる。

「ちいさくてかわいい」では隠しきれない

本作の面白さは、セイレーンという怪物だけが恐怖の対象ではないところにある。

島民は何を知っているのか。

本当の被害者は誰なのか。

そして「討伐すれば解決」という単純な話なのか。

物語が進むほど、最初に見えていた善悪が崩れていく。

だから『人魚の島のひみつ』は、かわいいキャラクターたちの冒険映画であると同時に、かなり真っ当なホラーでもある。

「ちいかわ」

その4文字では、もう隠しきれない。

ナガノ作品には最初から、ちゃんと狂気が住んでいる。

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