音楽はズルい。
ライブへ行く。
暗転する。
低音が鳴る。
照明が走る。
イントロが始まる。
まだ本人が何もしていないのに、
もう格好いい。
アイドルならSEが鳴った瞬間に客が叫ぶ。
バンドならドラムの一発で空気が変わる。
極端に言えば、音が鳴っているだけで「何かすごいことが起きている」ように見える。
音楽は世界観に酔わせてくれる
悲しい場面にピアノ。
登場シーンに重低音。
クライマックスにストリングス。
人間の感情は、思っている以上に音に誘導される。
だから音楽ライブでは、演者が一瞬ぼーっとしていても世界観が切れない。
曲が鳴っているからだ。
音が演者の代わりに空気を持たせてくれる。
これは相当強い。
舞台には「無音」がある
逆に、音をほとんど使わない演劇は怖い。
台詞が終わる。
次の人物が話すまで2秒。
その2秒で、
役者が役から降りれば全部見える。
目線。
呼吸。
立ち方。
手持ち無沙汰。
「今、次の台詞待ってるな」
と思われた瞬間、客は物語から現実へ戻る。
BGMがないから誤魔化せない。
舞台では、何もしていない時間まで演技になる。
盛り上がっているのか、音に盛り上げられているのか
だからライブを見ていて時々思う。
この熱狂、
本当に演者だけが作っているのか。
爆音。
照明。
SE。
レーザー。
客の歓声。
全部取った状態でも、その人はまだ格好いいのか。
もちろん音楽は、それら全部を含めた芸術だ。
ズルいから悪いわけではない。
むしろ、
人間が音に酔う生き物だと知った上で、最大限利用している。
その点で音楽は、エンタメとしてものすごく強い。
舞台は裸で戦う。
音楽は世界観を背負って戦う。
だからライブで「鳥肌立った」と感じた時、
少しだけ疑ってみてもいい。
その鳥肌、本当に本人だけの力ですか。
もしかしたら半分くらい、
スピーカーから出ている。






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