あいみょんが、原菜乃華主演ドラマ『もうパパ!』の主題歌「さながらロンリー」を書き下ろした。ドラマは10月4日開始。動画配信で“家族の幸せな日常”を発信し続ける父・良詫を堤真一、その期待へ合わせて本音を抑えてきた娘・紀子を原が演じる。脚本は『虎に翼』の吉田恵里香だ。
新曲はテンポのよいポップなメロディーに、葛藤や孤独、人生を切り開こうとする思いを載せるという。初披露は第1話。現時点で音源全体は公開されていない。だから楽曲の出来は決められない。ただ、“物語に寄り添う”という褒め言葉ほど主題歌を弱くするものもない。
主題歌は感情の答えではない。視聴者が迷うための最後の余白だ。
あいみょんは、感情の字幕ではない
ドラマ主題歌は、泣く場面で悲しさを増やし、前を向く場面で希望を補強できる。だが登場人物の心情をそのまま説明すれば、曲は高価な字幕になる。視聴者が紀子を理解する前に、歌が“ここは孤独です”と答えを渡してしまう。
あいみょんの強さは、きれいな共感だけではない。欲望、格好悪さ、言い切れない関係を生活の言葉で残す。紀子へ完全に同化するより、父にも娘にも刺さる別の角度を持つ方が、この題材には似合う。
SNS家族の幸福は、誰の作品か
『もうパパ!』が扱うのは、家族の出来事を父が配信し、娘がその幸福像へ合わせる構造だ。現代的なのはスマホではない。親が演出家、子が出演者になり、家庭の承認が再生数へ置き換わることにある。
一方で、家族動画をすべて搾取と断じれば雑になる。記録が支えになる家庭も、発信で仕事を得る人もいる。問題は、映る側が途中で降りられるかだ。ドラマが父を単純な悪役にせず、善意が支配へ変わる瞬間を描けるか。主題歌にも、その矛盾を丸くしない役割がある。
“ぴったり”より、少し邪魔な曲であれ
原は、明るい音の中に悩みや哀愁があり、作品世界にぴったりだとコメントした。宣伝として当然の言葉だ。しかし本当に残る主題歌は、本編へ従順なだけではない。最終回の後、ドラマと別の景色を開く。時には演出が求める感動へ抵抗する。
初回まで曲を隠す戦略は、場面と一緒に出会わせる利点がある。逆に、曲単体の評価がドラマの印象へ吸収される危険もある。あいみょんの新曲として立ち、紀子の物語にも摩擦を残せるかが勝負だ。
テレビ主題歌は放送直後に配信され、切り抜き動画やSNSの感想と一緒に反復される。劇中の父が家族を編集して発信する物語だからこそ、曲の一節だけが“共感できる名言”として消費される構図にも自覚的であるべきだ。フル尺には、短い共感へ回収されない棘を残してほしい。
主題歌は感情の答えではない。視聴者が迷うための最後の余白だ。「さながらロンリー」が『もうパパ!』へ寄り添いすぎた瞬間、SNS家族を批判する作品自身が、感情を演出する父親と同じになる。
出典・編集注記
テレビ朝日の2026年9月17日付記事、ABCテレビの番組発表、あいみょん公式情報を参照しました。楽曲は10月4日の初回放送で初披露予定のため、本文は公表された曲調・制作意図とドラマ設定を論じ、音源全体を聴いた評価ではありません。画像は実際の出演場面ではありません。






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